ジャイール・クーニャ (Jair Cunha)【ジャイール・パウラ(Jair Paula)】

投稿者: | 2024年5月22日
新規投稿 : 2024/05/22
最新更新日 : 2025/06/24

ジャイール・パウラ・ダ・クーニャ・フィーリョ 若手 次世代 ブラジル サッカー サントス センターバック 大型 逸材

ジャイール・パウラ・ダ・クーニャ・フィーリョ

Jair Paula da Cunha Filho

ポジション:センターバック/ザゲイロ

利き足:右

2005年3月7日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国サンパウロ州オルランジアに生まれる。
 オルランジアは州都サンパウロ市から北北西に約350km離れた内陸の町。人口は5万人に満たないが、地元のフットサルチーム「ADCインテリ」が2012年、13年に世界最高のフットサル選手の一人ファウカォン(ファルカン, Falcão, Alessandro Rosa Vieira)を擁し、国内リーグを連覇、そして、2013年にはコパ・リベルタドーレスを制覇。「フットサルの首都」として広く知られている。

<クラブ経歴>

≪育成時代

 ジャイール・クーニャは幼い頃から当然のようにボールに親しむと、2016年、10歳の時にサントスFCのセレクションを経てサントスU-11に加入する。
 2018年8月サントスU-12チームのメンバーとして韓国慶州にて開催された国際大会に出場。チームは決勝戦でセルタ・デ・ビゴ/ESPに5-0で勝利を収め、初タイトルを獲得。
 その後、順調にカテゴリーを上げていくと、2020年(年初14歳)には一年早くU-17チームに昇格を果たし、コロナ感染症拡大による自粛期間明けの10月に開幕したU-17全国選手権に出場。
 2021年(年初15歳)5月に開幕したU-17全国選手権にレギュラーとして出場。
 6月19日サントスFCとプロ契約を締結。契約期間は3年、7000万ユーロの契約解除金が設定される。
 7月には主戦場をU-20全国選手権に移す。
 2022年(年初16歳)には一年早くU-20チームに昇格し、1月開催のU-20全国大会カップ戦に出場。全9試合にフル出場を果たしチームの大会準優勝に貢献。
 8月1日トップチームに招集され全国選手権第20節フルミネンセ戦にベンチ入りを果たす(出場機会なし)。
 2023年(年初17歳)は、トップチームデビューも期待され、1月開催のU-20全国大会カップ戦に出場する。ところが、3試合目の試合中に負傷退場。検査の結果、右膝前十字靭帯および半月板への損傷が診断され、手術およびリハビリ生活を余儀なくされる。
 6月時点で9月にU-20チームへの復帰が見込まれていたが、再発を防止するため入念なリハビリが行われ、復帰時期が遅れることとなる。

サントス≫

– 2023 –

 2023年11月9日全国選手権第33節ゴイアス戦にて、試合終了間際の交代出場により18歳のプロデビュー。12月6日最終節フォルタレーザ戦では、後半16分に交代出場し29分間プレーする。

– 2024 –

 2024年(年初18歳)トップチームに昇格。
 3月9日州選手権第12節および3月17日決勝ラウンド準々決勝にて途中出場。
 3月17日決勝ラウンド準々決勝ポルトゲーザ戦は0-0のまま90分を終え、試合は準決勝進出をかけてPK戦に持ち込まれる。ジャイール・クーニャはPK戦の4人目のキッカーを務めると、これに成功。このゴールでチームは準決勝進出を決めた。
 しかし、元ブラジル代表CBジウ(Gil, 1987)と一対一の強さや絶妙なポジショニングで2023年の加入後間もなくレギュラーの座を掴んだCBジョアキン(Joaquim, 1998)のレギュラー陣の壁は高く、その後出場機会を失い、主戦場はU-20チームへと移る。
 ところが、7月に入りCBジョアキンにチグレス/MEXから800万USDのオファーがあり、ジャイールにトップチームでの出場機会が与えられる。
 7月1日全国選手権2部第13節シャペコエンセ戦(A)にてプロ初のスターティングイレブンに抜擢されると、高さとカバーリング、足元の技術とビルドアップ能力といった自身の特長を前面に出し、チームの1‐0の勝利に貢献。
 続く3試合も先発出場からチームの4試合連続無失点勝利に貢献する。
 クラブは、ジャイールのプレーを高く評価し、CBジョアキンの移籍を容認。ポジションを獲得したジャイールは、安定したクリーンなプレーを披露。全国選手権2部20試合(うち先発19試合)に出場し、その期間、受けたイエローカードは僅かに一枚、チームは11勝6分3敗の成績を残し、全国選手権2部優勝を飾った。

– 2025 –

 2024年リベルタドーレスと全国選手権の二冠を達成したボタフォゴがジャイール獲得に向けサントス、代理人と交渉を進める中、ジャイールは2025U-20南米ユース選手権に向けたトレーニングで2025年シーズンを始動する。
 2025U-20南米ユース選手権参戦中の2月10日、ボタフォゴ、サントス両クラブからジャイール・クーニャ移籍の発表。
 契約期間は2028年末、移籍金は1200万ユーロ(約20億円)。
 U-20南米ユース選手権での優勝を手土産にブラジルへ凱旋帰国を果たしたジャイールは、リオデジャネイロに降り立ち、すぐさま新天地ボタフォゴのトレーニングに合流する。
 2024年シーズンにCBアレキサンデル・バルボサ(Alexander Barboza, 1995)とコンビを組み鉄壁を築いたキャプテンCBバストス(Bastos, 1991)の長期離脱により空白となっていた右CBのポジションに収まると、2月23日リオデジャネイロ州選手権第11節クラシコのヴァスコ・ダ・ガマ戦(A)にて先発出場でクラブデビュー。
 3月30日開幕の全国選手権、4月2日に初戦を迎えたリベルタドーレスの両大会では、出場停止試合を除く全試合に先発出場。
 6月1日全国選手権第11節、古巣のサントス戦(A)では、後半41分、相手陣右サイドで受けたボールをFWアルトゥール(Artur, 1998)へ送り、FWアルトゥールのゴラッソをアシスト。
 6月15日クラブW杯グループラウンド第1節シアトル・サウンダーズ/USA戦では、前半28分、PA手前右の位置でのSBアレックス・テレス(Alex Telles, 1992)のFKにゴール前で頭を合わせる先制ゴール。このゴールは思い出に残るプロ初ゴールとなった。
 さらに6月19日クラブW杯グループラウンド第2節パリSG/FRA戦では、CBアレキサンデル・バルボサとのコンビ、VOLグレゴーリ(Gregore, 1994)とVOLマルロン・フレイタス(Marlon Freitas, 1995)の両ボランチとの連携で、欧州王者を零封に抑え込む活躍を見せた。
 クラブW杯開幕前の時点でノッティンガム・フォレスト/ENGがジャイールの獲得に乗り出していると報道されていたが、クラブW杯期間中にジャイールの評価は急騰。本人はボタフォゴに残留しプレーすることを望んでいるそうだが、欧州ビッグクラブの注目はさらに高まり、獲得争いはさらに熱を帯びていくだろう。

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2023年(18歳)サントス全国選手権23000
 合計23000
2024年(19歳)サントス全国選手権2部20170100
州選手権25200
 合計22175300
2025年(20歳)ボタフォゴFIFAクラブW杯327010
ヘコパ・スウアメリカーナ19000
リベルタドーレス538700
全国選手権1199001
州選手権19000
 合計21182711
イタリック斜体は、2025年6月24日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表(世代別含む)経歴>

– 2024 –

 2024年5月17日、6月3日~11日にかけて開催されるU-20代表合宿への招集が発表された。招集メンバーは23選手。この招集は2025年U-20南米ユース選手権に向けた初めての代表合宿として位置づけられている。
関連記事 : [2024.05.17発表]<ブラジルU-20代表招集>
 2024年8月17日、9月2日~10日にかけて開催されるU-20代表合宿への招集が発表された。招集メンバーは23選手。この招集は2025年U-20南米ユース選手権に向けた2度目の代表合宿。
関連記事 : [2024.08.17発表]<ブラジルU-20代表招集>

– 2025 –

 2024年12月20日に発表された2025U-20南米ユース選手権代表23選手の一人として選出。
関連記事 : [2025年U-20南米ユース選手権] U-20ブラジル代表選手一覧

2025U-20南米ユース選手権

 2025年1月24日1次リーグ開幕節アルゼンチン戦にスタメン出場。しかし、チームは0‐6の屈辱的な大敗を喫する。その結果を受け、1月26日第2節ボリビア戦は控えに回るが、1月28日第3節エクアドル戦にスタメン復帰(〇3‐2)。1月30日第4節コロンビア戦もスタメン出場を果たすがチームは0‐1の敗戦。
 かろうじて滑り込んだ決勝ラウンドでは、ボランチを含めた守備の整備が施されチームは一変。ジャイール自身も空中戦、カバーリング、対人の強さを発揮、不用意なミスもほぼなくなり、チームに貢献する。
 ブラジルU-20代表は、決勝ラウンド5試合を4勝1分、開幕節で大敗を喫したアルゼンチンにも粘り強い対応で1‐1の引き分けに持ち込み、最終節のチリ戦で3‐0の勝利を収め、2大会連続の優勝を収めた。
 ジャイールは、8試合702分の出場記録を残した。

<プレースタイル、エピソード、雑感 etc.>

 利き足は右。
 身長198cm、体重81kg。(サントスFCホームページ2024年5月21日参照)
 ポジションはセンターバック。4バックでは左右どちらのサイドでもプレーするが、右サイドでのプレー機会が多い。
 198cmの長身を武器にした空中戦はもちろんのこと、長い足をいかし、的確で瞬間的な判断力がもたらすボール奪取や、ドリブル阻止、インターセプトが印象に残る選手。
 長身にも関わらず、俊敏性があり、足元の技術は高く、攻撃時にはビルドアップを担うことが多い。懐の深いボールキープ力、視野の広い戦術眼から生み出される縦の鋭い楔のパスやサイドへの展開力があり、ドリブルで相手陣へボールを持ち上がるシーンや、相手のプレスを外すマルセイユルーレットを披露する器用さも併せ持つ。
 利き足の右足からは、サイドライン際から逆サイドのサイドライン際までのロングパスや、対角線上のロングフィードを正確に蹴り、左足での中・短距離のパス精度も高く、パス成功率は高い。
 2024年サンパウロ州選手権準々決勝では、19歳かつ自身トップチーム4戦目の試合出場ながら、PK戦のキッカーに選ばれPKに成功。10代とは思えぬ落ち着きや、気持ちの強さも持ちあわせている。

 2023年6月膝のケガのためリハビリ生活を送っていた頃のインタビューでは、リハビリ期間中に身長が2cm伸び、197cmになったと話していた。しかし、2024年サントスFCのホームページではさらに1cm伸び、身長198cmとのこと。サッカーだけでなく身体面でも成長が続いている。

 2024年サントスFCのセンターバックは4人体制を敷いている。
 2016コパ・アメリカなど代表11試合の実績を誇りコリンチャンスから移籍加入したCBジウ(Gil, 1987)。2023年からサントスFCにて不動のレギュラーを務めるCBジョアキン(Joaquim, 1998)。2023年8月にレギュラーに近づいたものの、ケガのために戦列を離脱したCBアレックス・ナシメント(Alex Nascimento, 1999)。そして、ジャイール・クーニャ
 2024年シーズン前に、2023年にCBジョアキンの相方を交互に務めた2選手が期限付き移籍で放出された結果により4人体制に絞られており、クラブとしてジャイール・クーニャをトップチームで育てる意図が示され、ジャイール・クーニャの試合出場機会は多くなるものと見込まれている。
 2024年5月21日現在、サントスFCはCBジウとCBジョアキンがコンビを組み、サンパウロ州選手権にて準優勝、全国選手権2部では第6節現在で首位、ここまでの総失点数が「3」と盤石な成績を残している。しかし、ジャイール・クーニャのビルドアップ力は、レギュラー2選手にない武器として、ファビオ・カリーリ(Fábio Carille)監督から高く評価されており、ジャイール・クーニャはスターティングイレブン、そして、レギュラーの座を虎視眈々とうかがっている。

 2021年はコロナ感染症拡大の影響で育成カテゴリーの南米選手権やW杯が中止となり、2023年は1月に負った膝の大ケガのため、世代別代表として注目を浴びることはなかった。しかし、2022年にはすでに、スペインやイタリアなどのビッグクラブから、公式、非公式の身元照会が届いていたという。
 2024年はトップチームに昇格し活躍が期待され、5月にはU-20代表への世代別代表初招集を受けた。クラブでは一試合でも多くの試合に出場しチームの一年での1部復帰に貢献し、U-20代表として2025年1月に開幕するU-20南米ユース選手権での活躍があれば、ブラジル国内のみならず、世界から脚光を浴びることになるだろう。すでに体格、技術においては世界で戦うだけの下地は十分にあると思われる。唯一不足していると思われる経験を、今後、継続的に積み上げていきたい。

(2025年6月24日追記)
 2025年6月に開幕したクラブW杯では鉄壁を構築。
 特に第2戦パリSG/FRA戦では、その的確なポジショニング、対人の強さ、高さを生かした空中戦、味方に預けるクリアなど、その潜在能力の高さを世界に示した。
 クラブW杯開幕前の時点でノッティンガム・フォレスト/ENGがジャイールの獲得に乗り出していると報道されていたが、クラブW杯期間中にジャイールの評価は急騰。本人はボタフォゴに残留しプレーすることを望んでいるそうだが、欧州ビッグクラブの注目はさらに高まり、獲得争いはさらに熱を帯びていくだろう。

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