新規投稿 : 2024/03/04
更新履歴 : 2025/06/30

アジソン・ド・ナシメント・ソアレス
Adyson do Nascimento Soares
ポジション:フォワード(ウィング)/アタカンチ(ポンタ)
利き足:左
2005年9月22日生まれ
<幼少期>
ブラジル連邦共和国北東部のマラニョン州、海岸沿いの州都サン・ルイスから南に250㎞内陸に入った人口約6万人に小さな町コロアタに生まれる。
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
2018年(年初12歳)、地元コロアタから約2200㎞離れたミナスジェライス州ベロオリゾンテに拠点を置くアメリカ・ミネイロ下部組織に入団。
入団直後からクラブ内での評価が高く将来を嘱望される。 2020年(年初14歳)、パンデミックによる自粛期間が明けるとU-17チームに昇格。さらには、U-16代表として初めて世代別代表に招集。
2021年はU-17チームでスタートしたものの、7月にU-20チームでの初試合で得点を決めると、以降は16歳ながらU-20チームを中心に公式戦に出場。年終盤にはトップチームのトレーニングに参加。 2021年11月にはアメリカ・ミネイロと契約期限を2024年12月としたプロ契約を締結する。
2022年1月にサンパウロで開催されるU-20全国大会カップ戦に16歳で選手登録されると、大会ではチーム全8試合のすべてにスタメン出場を果たし2得点1アシストを記録。チームは準決勝に進出する。
≪アメリカ・ミネイロ≫
– 2022 –
2022年1月21日U-20カップ戦準決勝サントス戦で敗れベロオリゾンテに戻るとトップチームに招集。
1月25日ミナスジェライス州選手権開幕節でベンチ入りを果たし、後半26分、途中交代出場でピッチに送り出され、16歳4か月でのプロデビューを飾る。
州選手権グループラウンドは計5試合に途中交代で出場すると、準決勝(決勝ラウンド一回戦)トンベンセ戦はホーム&アウェイの両試合にスターティングイレブンに抜擢される。
州選手権が閉幕すると再びU-20チームでの活動が主となり、U-20カテゴリーの全国選手権(準々決勝進出)、コパ・ド・ブラジル(ベスト16)、ミナスジェライス州選手権(準優勝)に出場し計32試合7得点。U-17チームではU-17州選手権準決勝クルゼイロ戦ホーム&アウェイの2試合に出場し各1得点を記録。
– 2023 –
2023年(年初17歳)は、前年に引き続き1月にサンパウロで開催されるU-20全国大会カップ戦からスタート。グループラウンド1試合を除く全試合にスタメン出場を果たし3得点2アシストを記録。チームは決勝戦でパウメイラスに1-2で敗れたものの、過去最高位の準優勝をおさめる。
2月11日州選手権第5節でこの年のトップチームでの初試合を迎えると、州選手権は計5試合に途中交代出場を果たす。
2023年4月12日コパ・ド・ブラジル三回戦ノヴァ・イグアス戦1stレグ、後半開始時にピッチに立つ。後半2分、MFジュニーニョ(Juninho, 1987)が後方からのボールにペナルティエリア入口右でヒールで流すと、そこに後方から走り込み、ワンタッチ目でディフェンダーをかわし、ツータッチ目で左足を振り抜きGKのニアサイドを抜く強烈なシュート。プロ初ゴールを決める。
4月15日全国選手権開幕節、19日コパ・スウアメリカーナグループラウンド、22日全国選手権第2節と連戦で途中出場を果たす。 4月26日コパ・ド・ブラジル三回戦2ndレグでは先発に抜擢。後半4分に相手陣右サイド深くのFKのキッカーを務めると、ゴール前に低く鋭いボールを送りチームの先制点をアシスト。
先発に起用され、得点に絡むプレーも増えていき、今後の活躍が期待され始めた矢先の5月12日、トレーニング中に右足首を骨折。治療には手術を要し約4か月間ピッチから遠ざかる。
9月15日U-20州選手権準決勝1stレグで復帰を飾り、24日2ndレグで90分間プレー。
10月8日第26節フォルタレーザ戦で11分間の出場を果たしトップチームへ復帰。しかし、その後は再びケガを負ったこともあり、以降は数試合に10分前後の出場を果たすに止まった。
– 2024 –
2024年(年初18歳)は参加資格のあるU-20全国大会カップ戦に出場せず、トップチームに昇格し1月25日開幕の州選手権に照準を合わす。しかし、州選手権は僅か4試合74分の出場に止まる。
2024年4月19日全国選手権2部開幕節もベンチを温めるにとどまったが、第2節で後半途中からの出場を果たすと、第3節、第4節と途中出場からアシストを記録。監督の信頼を獲得し、第6節にはスタメンとして起用される。
その後もコンスタントにスタメンを中心に試合に出場、2024年全国選手権2部では通算で2得点4アシストを記録。しかし、チームを1部再昇格に導くことは出来なかった。
– 2025 –
2025年(年初19歳)は、チームの中核の一人として1月19日ミナスジェライス州選手権開幕節からスタメン出場。第2節以降はしばらくベンチスタートとなったが、予選ラウンド終盤からはスタメンの座に復帰。
2月22日準決勝クルゼイロ戦2ndレグ(H)では、前半32分に右サイドをパス交換で抜け出し、PA内からマイナスのパスを送り、SBマルロン(Marlon, 1994)の先制ゴールをアシスト。
3月8日決勝アトレチコ・ミネイロ戦1stレグ(A)は前半31分にセンターバックの退場のためベンチに下がり、15日2ndレグはベンチスタート。アジソン自身は不完全燃焼、チームは2試合合計で1‐4の完敗を喫したが、州選手権は準優勝の結果を残した。
2025年4月5日に全国選手権2部が開幕。しかし、アジソンに出場機会は訪れなかった。
アジソンとアメリカ・ミネイロとの契約は2025年末に迎えていた。アメリカ・ミネイロはアジソンの代理人に契約の更改を打診するが代理人は頑なに固辞。6月末に移籍金を伴わない他クラブとの事前契約が解禁される状況となっており、クラブはアジソンにトップチームでのトレーニングを禁じ、アジソンは別メニューでのトレーニングを強いられることになった。
≪シャバーブ・アル・アハリ/UAE≫
– 2025/26 –
2025年6月6日、UAEリーグのシャバーブ・アル・アハリがFWアジソンの獲得を発表。
契約期限は不明。移籍金は非公表で、選手保有権についてはアメリカ・ミネイロが10%を継続して保有する。
≪シーズン別クラブ出場記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023年(17歳) | アメリカ・ミネイロ | 州選手権 | 7 | 182 | 0 | 0 |
合計 | 7 | 182 | 0 | 0 | ||
2023年(18歳) | アメリカ・ミネイロ | コパ・スウアメリカーナ | 1 | 15 | 0 | 0 |
全国選手権 | 8 | 239 | 0 | 0 | ||
コパ・ド・ブラジル | 3 | 127 | 1 | 1 | ||
州選手権 | 5 | 87 | 0 | 0 | ||
合計 | 17 | 468 | 1 | 1 | ||
2024年(19歳) | アメリカ・ミネイロ | 全国選手権2部 | 30 | 1614 | 2 | 4 |
州選手権 | 4 | 74 | 0 | 0 | ||
合計 | 34 | 1688 | 2 | 4 | ||
2025年(20歳) | アメリカ・ミネイロ | コパ・ド・ブラジル | 1 | 33 | 0 | 0 |
州選手権 | 12 | 485 | 0 | 2 | ||
合計 | 13 | 518 | 0 | 2 | ||
2025/26年(21歳) | シャバーブ・アル・アハリ/UAE | UAEプロリーグ | – | – | – | – |
合計 | – | – | – | – |
イタリック斜体は、2025年6月30日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表(世代別含む)経歴>
2020年のパンデミックによる自粛期間終了後に、翌2021年に開催が予定されていた南米U-17選手権に向けたU-16代表に招集。(2021南米U-17選手権はその後開催が中止された。)
2024年9月20日にCBFにより発表されたU-20代表合宿(10月7日~15日)への招集23選手の一人として選出。この合宿は2025年1月にペルーにて開催が予定されている2025年U-20南米ユース選手権に向けた3度目の代表合宿。
残念ながらU-20南米ユース選手権は未選出に終えた。
<プレースタイル、エピソード、雑感 etc.>
利き足は左。 身長168㎝、体重62kg。(2024年3月3日サッカーサイト「oGol」参照) ポジションは主に右ウィング。
右サイドから左足でコントロールされたファーサイドへの巻き込むシュートを得意とするが、コンパクトで振りの鋭いシュートでGKのニアサイドを狙うこともあり、ゴールに対する意識は高い。一方で、ディフェンダーに左足を意識させて縦(右足側)にボールを運び、ディフェンダーを外してゴール前にクロスボールを供給、ゴールに向かってドリブルを仕掛けチャンスを作り出すことも多い。
ウィングとしての起用時には、サイドの左右を問わず、浅い位置からも、ゴールライン際からも、質の高いクロスボールをゴール前に供給する。 二列目からは、時にはワンタッチで相手守備ライン裏へスルーパスを通し、時にはドリブルで自らボールを持ち上がり決定的なパスを送るシーンを見せる。
セットプレーではキッカーを務めることも多く、FKでは大きく曲がるボールや落ちるボールを駆使し直接ゴールを狙う。PKでは試合終了間際の1点ビハインドの状況でチップキックをゴール真ん中に蹴ったことがあり、心臓の強さも持ち合わせる。
何よりも、チーム戦術や起用されたポジション、与えられた役割に応じて、柔軟にプレースタイルを替え、高いレベルでタスクを遂行する頭の良さが印象に残る選手。
2023年には、前年のトップチームでのプレーぶりや、同年1月のU-20全国大会カップ戦でチームを準優勝に導いた活躍もあり、国内、海外を問わず、多くのクラブの注目を浴び、連日のように身元照会や獲得の意向を示す電話がクラブに寄せられる時期もあったという。 しかし、アメリカ・ミネイロは、ここ数年でFWヒシャルリソン(Richarlison, 1997, 2023/24シーズンはトッテナム/ENG所属)や、FWヴィトル・ホッキ(Vitor Roque, 2005, 2024年1月にバルセロナ/ESPに加入)を発掘、育成。2023年にはSBアルトゥール(Arthur, 2003)をバイエル・レバークーゼンへ送り出した実績があり、まだまだ成長が見込まれるアジソンをクラブ内で育て上げるため、他クラブからの興味についてはすべて断りを入れた。
アメリカ・ミネイロは、入団当初からアジソンの身体的、精神的な成長に合わせ、上位カテゴリーへのステップアップを実施。2021年末からはプロへの移行期間としてU-20チームとトップチームを往復させ、徐々にトップチームでの試合出場時間を積み重ね、アジソン自身も期待に沿うように成長を遂げていた。しかし、2023年5月の右足首の骨折で一時頓挫。骨折からの復帰後は、相次ぐケガに悩まされ、2024年に入っても州選手権での出場は限られたものとなっている。
2024年州選手権の出場機会の少なさは、アジソンのコンディションに原因があるのか、ケガからの移行プランに基づき意図的に出場時間を抑制したものなのかわからない。しかし、いずれにせよ、直近の3月2日の試合では、後半途中から右ウィングとして出場すると、僅かに枠を捉えなかったものの、ペナルティエリア手前外から得意のファーサイドから巻き込む惜しいシュートを放ち、試合終了間際には中央から送られたボールをペナルティエリア右からシンプルにダイレクトにペナルティエリア入口でフリーの状態で待ち構える味方選手へ折り返すマイナスのパス(このプレーは決勝点に関与)。出場時間は約30分に過ぎなかったものの、コンディションは好調期の状態に戻りつつあるように感じられた。
チームは、州選手権で準決勝進出を決め、アトレチコ・ミネイロとの対戦が決まった。そして、これを突破すれば2年連続で決勝に駒を進めることになる。さらには、4月20日には全国選手権2部が開幕。 アジソンには、まずは足首の不安を解消し、しっかりとコンディションを上げ、2024年はチームの一年での1部復帰に貢献するような活躍を期待したい。 そして、アメリカ・ミネイロでサポーターの記憶に残るシーズンを終えた暁には、欧州に進出し、ヒシャルリソンやヴィトル・ホッキに匹敵する活躍を期待したい。
(2025年6月30日追記)
2024年シーズンに中核の一人としてチームを牽引するまでに成長したものの、契約を巡ってアメリカ・ミネイロと決別し、2025年6月に中東UAEのシャバーブ・アル・アハリへの完全移籍が決まった。
シャバーブ・アル・アハリは近年、クイアバで活躍し世代別代表に何度も招集を受けたSBヒケウミ(Rikelme, 2003)や、インテルナシオナウで実績を残したCB兼SBイゴル・ゴメス(Igor Gomes, 2001)など、若手のブラジル選手を積極的に獲得、多くの試合に起用し、2024/25期はUAEリーグ三冠を達成するなど、中東の強豪クラブの一つとしての地位を確立しつつある。
また、シャバーブ・アル・アハリには2020年10月‐2024年7月にFWイゴル・ジェズス(Igor Jesus, 2001)が在籍。FWイゴル・ジェズスは、2024年7月にボタフォゴに加入するや、10月にはブラジル代表に選出。2024年10月10日2026W杯南米予選第9節チリ戦(A)に先発に抜擢され代表デビューを果たし、その試合で代表初ゴールを記録した。
中東への移籍はネガティブな印象があるが、FWイゴル・ジェズスの活躍がその印象を薄めている。
アメリカ・ミネイロで高い評価を受けたアジソン。シャバーブ・アル・アハリを足場にヒシャルリソンやイゴル・ジェズスに続くことができるだろうか。