ケルビン・アンドラーデ (Kervin Andrade)

投稿者: | 2024年3月20日
新規投稿 : 2024/03/20
最新更新 : 2025/06/28

ケルビン・マリオ・アンドラーデ・ナバーロ 若手 選手 ベネズエラ 逸材 フォルタレーザ 代表

ケルビン・マリオ・アンドラーデ・ナバーロ

Kervin Mario Andrade Navarro

ポジション:FW(WG)/アタカンチ(ポンタ)、攻撃的MF/メイオ・カンピスタ

利き足:右

2005年4月13日生まれ

<幼少期>

 ベネズエラ・ボリバル共和国、国内最大の面積を誇るボリバル州に建設された計画都市シウダ・グアジャナ域内プエルト・オルダス地区に生まれる。
 4歳の頃、ケルビンの生まれ持ったサッカーの素質を感じ取った父マリオは、自身が監督を務める地区内のサッカースクールにケルビンを入団させると、ケルビンは夢中になってサッカーを楽しんだ。父マリオの指導のもと、ケルビンはサッカーの素質のつぼみを膨らませていく。
 父は二人の関係を、親子、指導者と選手、という関係だけでなく、サッカーへの情熱を共有する同志だと話している。

<クラブ経歴>

≪育成時代

 ケルビンはその後、プエルト・オルダスに本拠を置くミネロス下部組織を経て、2019年に13歳で首都カラカスに本拠を置くデポルティボ・ラ・グアイラに加入。

デポルティボ・ラ・グアイラ/VEN≫

– 2021 –

 2021年には15歳でトップチームにトレーニングに参加。
 2021年4月25日ベネズエラ1部リーグ第2節、後半11分にピッチに送り出され、16歳12日でのプロデビューを飾る。
 2021年7月9日、自身6試合目の出場となるリーグ戦第13節では、後半37分にピッチに立つと、後半45+3分、ゴール正面約25mのFKを直接ゴール右隅に決めるプロ初ゴール。
 プロデビュー年の2021年は、13試合(うち先発3試合)430分1得点を記録して終えた。

– 2022 –

 2022年(年初16歳)序盤は出場機会のない試合や途中交代での出場が続いたものの、中盤に差し掛かる頃には先発出場の機会が増え、終盤には先発に定着。チーム年間44試合のうち、30試合(うち先発19試合)に出場し3得点を記録。

– 2023 –

 2023年(年初17歳)は2月4日のリーグ戦開幕節こそ欠場したものの、翌第2節以降5月20日第15節まで全試合に出場(うち先発10試合)。その後は6月5日に初戦を迎えるトゥーロン国際大会(U-23)に向けチームを離脱。帰国後初戦の6月25日リーグ戦第16節を凱旋試合として先発出場を果たすが、この試合は同時にデポルティボ・ラ・グアイラでの最後の試合となった。

フォルタレーザ≫

– 2023 –

 2023年7月23日、フォルタレーザよりケルビンの一年間の期限付き移籍加入が発表。
 7月26日には早くもフォルタレーザBチームの公式戦に出場。その後はU-20の公式戦5試合に出場し2023年シーズンを終える。

– 2024 –

 2024年(年初18歳)、1月開催のU-20全国大会カップ戦に出場。チーム全5試合のすべてに先発出場を果たし、3得点1アシストを記録。しかし、公式記録以上にスキルの高さと想像力の豊かさが注目を浴び、クラブ内での評価が一気に上がる。
 1月14日のU-20カップ戦敗退後にトップチームに招集。
 2024年1月20日セアラー州選手権開幕節にベンチ入り。後半37分にクラブデビューを飾る。後半45+2分、自陣右サイドでフォルタレーザがボールを奪いそのまま縦にボールを運ぶと、ケルビンはハーフウェイライン付近やや左サイドからゴールに向かい駆け上がる。FWを追い越したところに右サイドのMFヤゴ・ピカチュー(Yago Pikachu, 1992)からクロスが送られ、フリーの態勢で右足を合わせクラブ初ゴール。
 1月28日州選手権第2節で先発に抜擢されアシストを記録すると、31日第3節では途中出場から2試合連続のアシスト。
 その後も途中交代出場を中心に連戦に出場。
 3月6日、フォルタレーザは買取オプションを行使。
 2024年3月8日、ベネズエラサッカー連盟から3月21日イタリア戦、24日グアテマラ戦に向けた代表への招集が発表。
 代表戦から帰国後、しばらくは出場機会は訪れなかったが、4月19日コパ・ド・ノルデスチ準々決勝アウトス戦にスタメンで起用されると2ゴールをマーク。
 4月28日全国選手権第4節RBブラガンチーノ戦(H)もまた、スタメン出場から1得点を記録する。
 その後は、過密日程を考慮に入れ多くの選手を試合に起用し高いレベルでチーム戦術の浸透を図るボイボダ監督の選手起用術のもと、途中交代出場が中心ながら多くの試合に出場。
 フォルタレーザでの実質的に一年目のシーズンは、35試合(うち先発10試合)1200分強の出場で7得点5アシストの高アベレージの得点関与を記録した。
 また、3月の代表招集、24日グアテマラ戦での代表デビューに続き、2025コパ・アメリカに出場(6月30日ジャマイカ戦にて後半29分にピッチに送り出され、後半40分にFWエリキ・ラミレス(Eric Ramírez, 1998)のゴールをアシスト)。9月、10月、11月の2026W杯南米予選にも連続して招集を受け2試合に出場した。

– 2025 –

 2025年(年初19歳)は、2025U-20南米ユース選手権の出場で明ける。同大会は予選ラウンドの全4試合にスタメンフル出場を果たし2得点を記録した。
 同大会敗退後の2月1日にフォルタレーザに戻るが、出場機会になかなか恵まれない。チーム優先度の低いコパ・ド・ノルデスチで2度の先発出場があるものの、リベルタドーレスや全国選手権では後半終盤での出場時間の交代出場が僅かにあるばかり。
 2025年6月28日現在、出場時間は12試合(うち先発3試合)329分、1得点に止まっている。
 2025年はシーズン前の期待を大きく裏切っているボイボダ監督率いるフォルタレーザだが、攻撃面で違いを作ることができるケルビンを積極的に起用してもらいたいと個人的に強く願っている。

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2022年(16歳)デポルティボ・ラ・グアイラ/VENベネズエラリーグ1343010
 合計1343010
2023年(17歳)デポルティボ・ラ・グアイラ/VENコパ・スウアメリカーナ210400
ベネズエラリーグ28152230
 合計30162630
2023年(18歳)デポルティボ・ラ・グアイラ/VENベネズエラリーグ1481121
 合計1481121
フォルタレーザトップチーム出場歴なし
2024年(19歳)フォルタレーザコパ・スウアメリカーナ57510
全国選手権1349311
コパ・ド・ブラジル44210
コパ・ド・ノルデスチ634731
州選手権726413
 合計35122175
2025年(20歳)フォルタレーザリベルタドーレス11400
全国選手権58201
コパ・ド・ブラジル28300
コパ・ド・ノルデスチ312510
州選手権12500
 合計1232911
イタリック斜体は、2025年6月28日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表(世代別含む)経歴>

– 2023 –

 2023年6月開幕のトゥーロン国際大会(U-23)代表に18歳で選出。
 5日コスタリカ戦に先発出場し45分間プレー。8日サウジアラビア戦は22分間の出場。11日フランス戦は出場機会なし。7位決定戦モロッコ戦は先発フル出場を果たす。

– 2024 –

 2024年3月8日、ベネズエラサッカー連盟から3月21日イタリア戦、24日グアテマラ戦に向けた代表への招集が発表された。
 3月24日グアテマラ戦にて0‐0で迎えた後半39分にピッチに送り出され、代表デビューを飾る。
 2025コパ・アメリカ代表に選出。
 2025年6月30日予選ラウンド第3節ジャマイカ戦、後半29分にピッチに立つと、後半40分、自陣センターサークル内で左サイドからの横パスを受け、前を向き縦にスルーパス。これに抜け出したFWエリキ・ラミレス(Eric Ramírez, 1998)がGKとの一対一を制しゴール。大舞台での代表2試合目で初得点関与となるアシストを記録。
 2024年9月、10月、11月の2026W杯南米予選にも招集を受け、9月5日ボリビア戦(A)、11月19日チリ戦(A)に後半交代出場。チームの勝利には結びつかなかったが、フル代表でも着実に経験を重ねている。

– 2025 –

 2025年1月に開幕したU-20南米ユース選手権代表に選出。
 予選Gラウンドの全4試合にチームキャプテンとしてスタメンフル出場。1月23日開幕節チリ戦(X1‐2)、1月31日第5節ウルグアイ戦(〇1‐0)ではゴールをマークした。

<プレースタイル、エピソード、雑感 etc.>

 利き足は右。しかし、ほぼ同等に左足も駆使。
 身長163㎝、体重不明(2024年3月15日サッカーサイト「oGol」参照)
 ポジションはセカンドトップ、トップ下、ウィング。
 ベネズエラが生み出した新時代のファンタジスタ。
 ボールを扱う技術も十分に高いレベルにあるが、見るべきは予想を上回るプレーの質と選択肢の豊富さ、瞬時の判断力の高さ。
 ゴールまで約30mの射程圏に入るや、隙あらば左右いずれの足からも強烈なミドルシュートを放ち、また左右のいずれの足からもピンポイントのクロスボールをゴール前に供給、最終ライン裏への丁寧なスルーパスもプレーの選択肢に入る。
 アウトサイドキックを使ったパス、クロス、シュートを繰り出し、振りの小さいパス、クロス、シュートを繰り出す。ウィングでの起用時には相手ゴールライン際までドリブルで持ち込む場面や、相手SBの裏のスペースを狙ったフリーランニングで相手のサイドを混乱に陥れる。
 サイド、中央のプレーに関わらず、相手の嫌がるポジションを察知する嗅覚が鋭い。
 試合ではセットプレーのキッカーを務める。チームでのトレーニング終了後には毎日のように個別にフリーキックの練習を行う。プロ初ゴールはフリーキックからコースを狙ったシュートでゴールネットを揺らす。
 公称163㎝の小柄な体格は現代サッカーにおいてはハンディキャップとなりえる。しかし、豊かな想像力とそれを実現可能せしめる技術で大男たちを手玉にとる姿は現在のプレーからも想像に難くない。

 英「The Guardian」紙は、「The Next Generation」2022年版にて、将来性のある60人の有望な選手の一人として選出。
 『CIES Football Observatory』では、将来が嘱望される攻撃的な世界の20選手の一人として評価している(評価時期は不明)。

 ケルビンは”トゥティ(Tuti)”というニックネームを持ち、しばしば『ケルビン・”トゥティ”・アンドラーデ (Kervin "Tuti" Andrade)』と呼ばれる。
 幼い頃からいたずらっ子だったケルビンは、映画「チャイルド・プレイ」の殺人人形"チャッキー"の真似をしながら「チャッキーだぞぉ(¡Soy "Chucky", soy  "Chucky"!)」と言いながら友達を追い回して遊んでいた。しかし、チャッキー "Chucky"をうまく発音できず、「トゥティだぞぉ(¡Soy "Tuti", soy  "Tuti"!)」と言っているように周りには聞こえ、それ以来”トゥティ(Tuti)”と呼ばれている。
 父マリオはこのエピソードを話しながら、この頃の、友達を驚かし、周りを楽しませようとする性格が、今のサッカーでのプレーにも良く現れているね、と付け加えた。

 足元の技術やパス技術に負けず劣らず、いつの間にか相手の急所に現れるポジショニングが秀逸すぎるファンタジスタ。
 遠くない将来に欧州ビッグクラブに移籍を果たし世界に名を轟かせる可能性を秘めている、というのが個人的な感想。全国選手権、コパ・スウアメリカーナでのプレーが楽しみな2024年イチ押しの選手だ。

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